去年、大東島をはじめて訪れました。
南北両島をめぐったのですが、まず、断崖絶壁に囲まれた島の地形に驚き、そののちに一面のサトウキビ畑にまた、驚きました。
これらの事実は調査の下調べの段階で知っていましたが、やはり百聞は一見にしかずです。
島の歴史をたどるなかで、大東島に最初に移住したのが八丈島の島民であり、開拓の目的がアホウドリの羽毛採取事業であったことを知りました。なかでも、鳥島のアホウドリを絶滅寸前に追い込んだ人物が大東島開拓をはじめたその人でもあることには衝撃を受けました。
もしもサトウキビの島にならず、現生の自然が今日まで残っていたら、と想像をめぐらすとともに、明治の人々のバイタリティに、なんとも言えない複雑な気持ちになりました。
そういうわけで、この半年ほど南洋開拓の歴史に興味を持っていたところに見つけたのがこの本です。
本書では、明治の日本人がなぜ南洋に進出していったのかについて、アホウドリの羽毛事業からひも解いています。
明治の日本人が、鳥島、大東諸島にとどまらず、ミッドウェー、南沙諸島、ミクロネシアにと鳥を撲殺しまくっていた歴史はなかなかショッキングで陰鬱な気持ちになります。
しかしその一方で、そういった暗い歴史のうえで、現在、大東や尖閣が日本の領土たるに至ったことにも気づかされました。
もし玉置半右衛門がやらなかったら、別の誰かがアホウドリを狩り尽くしていたのでしょう。あるいは、誰もアホウドリの価値に気づかなかったら…あるいは欧米によるグアノ採掘が先に進んでいたら…。
いずれにせよ、これらの島々とそこの鳥たちに幸せな今日が来ることはなかったのかもしれません。
それにしても、どこの開拓にも登場する八丈島民、アグレッシブすぎます…。